「役員退職金の準備をしませんか?」
保険のセールスからこのように言われたことがありませんか?
保険販売の一つの切り口は「役員退職金の準備」です。
というのも、数年前の税制改正で退職給与引当金が廃止され、適格退職年金の廃止が決定されてからというもの、従業員の退職金を準備するために生命保険が登場します。
保険セールス業界の中では、
〔解説〕
退職金は将来の費用(支出が必要)ですが、結構多額になります。お金を貯めておかなければ支払うことができないのですが、利益に対しては税金が掛かります。
退職金に当てるためにお金を貯めようと考えた場合、税金が掛かっては中々貯まりません。
そこで、貯めた金額を費用に出来る仕組みが必要となります。
これが出来るのが、中退共と生命保険(実際は、逓増定期保険、長期傷害保険、がん保険が利用されています)なのです。
今までの説明でなるほど‥と退職金の準備をされる社長もおりますが、折角ですからもう少し、分析を加えてみましょう。
なぜ退職金を準備する必要があるのでしょうか?
「慣行だから」とか、「従業員にも払っているから役員も貰えたら‥」というご意見もあるでしょうが、従業員でも役員でも現在の終身雇用制が崩れつつある状況の中で、「退職金を準備しましょう」と叫ばれているのは、退職金に対する税金が安いからなのです。
退職金に対する所得税は、退職所得控除額を差し引いた残りに1/2を乗じて計算した金額に超過累進税率を適用します。
所得税の最高税率は37%ですが、退職金の税率は最高でも1/2の18.5%です。
ここが魅力となっています。
(結論)貰う人の手取りを増やすためには、少しでも多くの退職金を支払うことです
前述したとおり、従業員の退職金準備は第一に中退共、第二に生命保険、役員の退職金準備は生命保険が一番手です。
(注)
中退共を利用する場合の注意点について
最近は中退共の運用利回りが低下し、退職金支給額の改定が行われています。
会社としては、退職給与規定において、この中退共の改正に巻き込まれないメカニズムが必要です。「退職金として○○円を支払う。その原資は中退共に拠出する」という書き方ではNGです。出来れば「退職金の準備として中退共に月額△△円支払います」と記載してください。
なお、生命保険を利用する場合には、解約時の金額は確定しています。したがって、「退職金として○○円を支払う。」という記載が可能です。
役員退職金を支給する場合に注意をしなければならないのは、
「退職金が他の役員や世間相場と比して著しく高額では無いこと」
これをどのように立証するかが大事です。
功績倍率とは、この会社にどの程度功績があったかを倍率で計算したものとなります。
功績倍率は一般的に、平取締役で1〜2倍、代表取締役で2倍〜3倍強が相場となっており、代表取締役であっても功績倍率が4倍では高すぎるということになっています。
(注)
功績倍率と退職金支給額の計算方法について
退職金の支給は一般的に以下の計算式に従って計算されます。
退職時月給 × 勤続年数 × 功績倍率 = 退職金支給額
一般的には「税務署はお上であり、お上にはあまり楯突かないほうが得である」と多くの方が思っているはず。前もって「役員退職給与規定」なるものを用意 しておくことが不要な争いを無くす手立てとなると思われます。
そして、功績倍率をあくまで世間相場通りにしておけば、税務調査であらぬ咎めを うけることも無いのではないでしょうか。
ただし例外もあります。青色発光ダイオードの開発者中村修二氏と日亜化学との裁判では、一時的ではあったが、ノーベル賞級の世界的発明である青色発光ダイオードの開発者 中村氏の貢献度を約50%とした判決が出ました。これを代表者に当て嵌まれば、在任中の剰余金の1/2まで退職金として支払可能であるということになるのですが、これが認められるか否かはどなたかがトライをする必要があります。チャレンジをした方がおられましたらぜひ教えてください。